■ラウンドテーブル発表グループのご案内 ■
日本文学協会第72回大会 午前の部
11月19日(日)10時受付開始 10時30時開始
各グループとも13時終了
会場 相模女子大学
河童の棲む文学誌――芥川から妖怪ウォッチまで―― 代表者 野本 聡
名前は誰のものか――現代小説とマンガの検討から―― 代表者 康 潤 伊
「近世神話」の可能性を探る 代表者 山下 久夫
教科書のなかの村上春樹――「文学国語(仮称)」の時代を前に―― 代表者 野中 潤
日本語非母語話者に対する古文・漢文・くずし字学習支援 代表者 佐藤勢紀子
(申込み受付順)
河童の棲む文学誌――芥川から妖怪ウォッチまで――
代表者 野本 聡
進行役 野本 聡(明治大学兼任講師)
発表者 安藤 公美(東邦大学兼任講師)
乾 英治郎(立教大学兼任講師)
大國 眞希(福岡女学院大学)
【趣旨】
河童は現実と虚構の間に現象する。現実に対峙するこの一項を幻想、想像、狂気、あるいは死とも言い換えることは可能だろう。民俗の世界において河童にはしばしば災厄に命を奪われた、奪わざるを得なかった者たちの表象が託されているという。その河童が境界を侵犯しこちら側の世界で現象するということはともすれば死にまつわる記憶の回帰でもあるのだ。それをことさらに恐怖と捉え、再び亡き者として水底へと沈めることに与したくはない。むしろ批評的な対話の場をそこに開示し、この世界を今一度捉えなおす契機とすることはできないか。本ラウンドテーブルが河童というモチーフを選択し見出しつつあるのは、河童を描くテクスト群が奇しくも暴力や戦争と不可避に絡み合っていることなのだ。その水脈をさらに源流に、支流へと辿り、河童の棲む文学誌とそれを読むことの意義を現在に描き出したい。具体的に扱うテクストとして、安藤公美が小川芋銭と芥川龍之介「河童」、大國眞希が火野葦平「河童曼荼羅」「キリシタン河童」、乾英治郎が柳田國男「山島民譚集」、飴村行「粘膜人間」、野本聡が遠地輝武「沼の聖族」を予定している。
名前は誰のものか――現代小説とマンガの検討から――
代表者 康 潤 伊
進行役 茂木謙之介(日本学術研究会)
発表者 康 潤 伊(早稲田大学大学院)
江藤広一郎(日本大学高等学校・中学校(非常勤))
西貝 怜(白百合女子大学大学院)
コメンテーター
千田 洋幸(東京学芸大学)
【趣旨】
われわれは常に〈名前〉とともにあり、〈名前〉が示す関係性の中に包含されている。〈他者〉を名づけること/から名づけられることの中には、名づけられた対象が否応なくその名前のもとに呼ばれるという権力性が生まれる。また自ら名づける場合にも、その主体性と振る舞いには権力性が内在している。すなわち〈名前〉をめぐっては、同化/異化、従順/抵抗、融和/対立、包摂/排除など様々なレベルで〈他者〉の介在を回避することはできないのである。
本ラウンドテーブルでは、現代日本において、名づけ(られ)ることの持つ意味を〈他者〉との関係から考えていく。鷺沢萠のテクストから在日朝鮮人の「本名」をめぐる問題を、津村記久子のテクストから家と労働の問題と〈名前〉表記の関係を、そして漫画作品から動物と人間の間における名づけの問題を検討し、動態としての〈名前〉をめぐる問題系に多彩なアプローチを試みたい。
「近世神話」の可能性を探る
代表者 山下 久夫
進行役 山下 久夫(金沢学院大学)
発表者 曽根原 理(東北大学)
小川 豊生(摂南大学)
斎藤 英喜(佛教大学)
【趣旨】
「近世神話」という方法論を提起するには、まず神話概念の拡大が必要だ。神話を歴史の彼方にある神々の物語というだけでない。その時代の要請するアイデンティティ=存在の根拠、そのときの「現在」を意味づけ越えるための知のコードを発見・創造していく運動、これを「神話」と呼ぼう。そのとき浮かび上がるのは、古代、中世、近世、近代、現代それぞれの時代が必要とした「神話」の創造だ。その視座から、「近世」という問題を考えてみたい。
「神話」がなぜ、どのようにして創造されるかという本質的な問題に取り組む中で発見される「近世」である。これまで近代主義とは異なる「近世」を強調する際にも、中世の問題系と切り離したり、近代の内実を十分問わないまま時代区分の自明性に自閉していなかったか。世俗化、享楽主義、儒教の日本化、出版文化の発達という視点だけで済ませていなかったか。よって、中世や近代とのつながりを重視しつつ、そのどちらでもない「近世」固有の可能性を模索するものとして、「近世神話」の議論を提起したい。
教科書のなかの村上春樹〜「文学国語(仮称)」の時代を前に〜
代表者 野中 潤
進行役 野中 潤(都留文科大学)
助川幸逸郎(横浜市立大学)
早川 香世(東京都立深川高校)
【趣旨】
「羅生門」「山月記」「こころ」「舞姫」など、定番教材と言われる小説教材が長く読み継がれている一方で、新しい小説教材の発掘に苦労する時代になっている。評論教材がどんどん置き換えられ、ほんの数年前に発表されたものが教材として選び取られる状況とは対照的で、川上弘美やよしもとばなな、多和田葉子などの小説が採録されているとは言え、前述の定番教材のような存在感を示すものはまだない。そのような状況下で、例外的に数多く採録されている小説教材として、村上春樹の作品をあげることができる。特定の作品が特権的に採録されるわけではなく、「鏡」「青が消える」「沈黙」「とんがり焼きの盛衰」「レキシントンの幽霊」など、多様な短編が取り上げられている点に特徴があるのだが、なぜ村上春樹の作品が教材としてこれほど多く取り上げられているのか。そこには、どのような可能性と限界があるのか。参加者とともに考えてみたい。
日本語非母語話者に対する古文・漢文・くずし字学習支援
代表者 佐藤勢紀子
進行役 佐藤勢紀子(東北大学高度教養教育・学生支援機構)
発表者 荒武賢一朗(東北大学東北アジア研究センター)
オリオン・クラウタウ(東北大学大学院国際文化研究科)
虫明 美喜(宮城教育大学)
【趣旨】
日本文学、日本史など日本学の研究を志す者を中心に、日本語非母語話者の古文、漢文、くずし字学習のニーズは常に存在する。しかし、海外では、経済的な事情や人材不足により、そうした特殊なニーズに十分応えることのできる教育機関はごく少数である。また、国内においても、古文・漢文の基礎教育は中等教育段階で行なわれているため、留学生が大学や大学院でそれらの基礎訓練を受ける機会はほとんどない。くずし字入門の授業が開設されているケースはあるが、留学生は古文・漢文の基礎知識が不十分なため受講が困難である。
非母語話者が抱えるそのような問題についてどう対応すればよいのか。本ラウンドテーブルでは、国内外における非母語話者を対象とする古文、漢文、くずし字教育の取り組みを紹介し、どのような学習支援が望まれているか、また実現可能であるかについて、参加者とともに考えたい。
問い合わせ先 日本文学協会
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e-mail bungaku1946@piano.ocn.ne.jp
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