ロゴ
Home | About Us | Contact Us | Site Policy | Access Map

ラウンドテーブル発表グループのご案内 

日本文学協会第71回大会 午前の部
11月6日(日)10時受付開始
 
10時30時開始
                  各グループとも13時終了

会場 二松學舍大学

* 明治期文芸における新旧対立と連続性                       代表者 日置 貴之
* 昭和戦前期の探偵小説と優生学                           代表者 乾 英治郎
* 「現在」に再生する『とりかへばや』                          代表者 萩野 敦子
* 機構としての探偵小説                                  代表者 山口 直孝
* 詩人・蠹魚・穴 ――佐藤亜紀と『吸血鬼』を読む                 代表者 西原 志保  
* 〈変態〉からみる近代日本精神史                           代表者 光石亜由美
* 伊勢物語の古典化 ――冷泉家流伊勢物語古注研究の再検討――   代表者 梅田  径
* 国語科教育の現在――アクティブラーニング、ICTといかに向き合うか  代表者 野中  潤

                                                         (申込み受付順)

明治期文芸における新旧対立と連続性

代表者 日置 貴之
進行役 日置 貴之(白百合女子大学)
発表者 井上 泰至(防衛大学校)
      合山林太郎(慶應義塾大学)
      松澤 俊二(桃山学院大学)
【趣旨】
 明治期の文芸諸分野における改革を見渡した時、分野の違いを超えて通有の要素が存在することは間違いない。例えば、「新派」という概念は、和歌/短歌・俳諧/俳句・演劇の各分野に見られる。これらはそれぞれに登場の時期や意味合いを異にしつつも、「仮想敵」としての「旧派」に対する自らの差別化や、それにも関わらず明らかに認められる「旧派」との連続性といった点で、共通の性質を持つように思われる。本ラウンドテーブルでは、近世以前からの伝統を持つ和歌・漢詩・俳諧・演劇の各分野の明治期の動向について、そうした新旧勢力の対立と連続性という観点から報告を行った上で、討議を通じて分野間の共通点と相違点を明確にする。さらには、この試みを小説以外の諸分野を中心に据え、小説史をも逆照射した明治文学史の構想の足がかりとできればと考えている。



昭和戦前期の探偵小説と優生学

代表者 乾 英治郎
進行役 乾 英治郎(立教大学兼任講師)
発表者 鈴木 優作(成蹊大学大学院)
      松田 祥平(立教大学大学院)
【趣旨】
 二〇一三年に医療現場に導入された新型出生前検査を始め、人間を遺伝的傾向から分析する医療行為が盛んである。一方で、これらが優生学的な傾向につながることを危惧する声もある。優生学が日本において最も活発だったのは、一九三〇年から「国民優生法」が公布された一九四〇年のことである。この時期の探偵小説の中には、優生学的言説を取り入れた作品も散見できる。足跡・頭髪・指紋・血液などがしばしば事件解決の手掛かりとなる探偵小説は、元より〈科学的に定義された身体〉を扱う文芸であり、優生学との親和性も高かったと考えられる。
 本ラウンドテーブルの目的は、犯罪人類学・優境学・血液に関する科学的言説の三つの視点から、一九三〇年代の優生思想と探偵小説との関わりを浮かび上がらせていくことにある。過去の時代思潮の単なる紹介にとどまることなく、文学―科学言説―社会的倫理の関係について、来場者の方々と共に開かれた議論を展開したいと考えている。



「現在」に再生する『とりかへばや』

代表者 萩野 敦子
進行役 萩野 敦子(琉球大学)
発表者 片山ふゆき(苫小牧工業高等専門学校)
      勝亦 志織(中京大学)
      橋本ゆかり(首都大学東京(非))
【趣旨】
 現在人気を博しているコミック『とりかえ・ばや』(さいとうちほ)は、古典文学『とりかへばや』を原作としながらも、設定等を様々に改変した意欲的な再生作品である。舞台は平安時代だが登場人物たちの思考や発想は「現在」の我々に近く、彼らが「自分らしく生きる」ための苦悩や葛藤は「平安時代の装束をまとった現代人」のそれに見える。一九八〇年代の氷室冴子による少女小説『ざ・ちぇんじ!』と山内直美による漫画版、九〇年代の田辺聖子による少年少女向け現代語訳といった過去の再生作品と比較すると、益々〈さいとう版〉ならではの「現在」性は興味深い。「女」「男」の在り方の多様性への理解と認容が広がりつつある「現在」に再生作品を通して『とりかへばや』が語りかけてくるものについて、また、その「現在」に「古典」を再生することの意義について、主要登場人物に焦点を当てた各発表者の問題提起を起点として、皆さんと語り合いたい。



機構としての探偵小説

代表者 山口 直孝
進行役 山口 直孝(二松學舍大学)
発表者 栗田  卓(フェリス女学院大学)
      小松史生子(金城学院大学)
      宮本和歌子(京都光華女子大学)
【趣旨】
 一九二〇年代に専門的な書き手を得、円本ブームの中で発展していった探偵小説は、まずは享楽的な世相における消費物であった。エロ・グロ・ナンセンスの文化と交渉し、大衆の欲望に応えることで、探偵小説は、日本独自の展開を遂げていく。しかし、探偵小説は、受容者の求めにただ従属していたわけではない。自己言及性の高い探偵小説は、常に自らのありようを問い直し、刷新していこうとする志向を持つ。読者を楽しませるために趣向を凝らすのはむろんのこと、社会的評価に敏感に反応して弁明に努めたり、純文学との関係づけに腐心したりするなど、外部へ開かれようとする意識が顕わである。論理によって説明可能な世界を構築しようとして、神秘的なもの、超越的なものを呼び込んでしまう構造にも、同様の運動を指摘できるかもしれない。本ラウンドテーブルでは江戸川乱歩・木々高太郎のテクストおよびその周縁の言説を中心に検討し、探偵小説というジャンルの機構を問い直すきっかけを探りたい。当然その作業は、日本近代の特性を探る作業に接続することになろう。



詩人・蠹魚・穴――佐藤亜紀と『吸血鬼』を読む

代表者 西原 志保
進行役 茂木謙之介(国立小山工業高等専門学校(非))
発表者 奥村 大介(東京大学・日本学術振興会特別研究員)
      西原 志保
      佐藤 亜紀(作家)
【趣旨】
 佐藤亜紀『吸血鬼』(講談社、二〇一六年)は、吸血鬼に関わる民間伝承をはじめ、詩に関するモチーフや妊娠、蠹魚など、さまざまなイメージにあふれている。とりわけ注目したいのが、穴を開け、その穴を塞ぐという構造が繰り返し現れる点である。
 著者・佐藤亜紀は、一九九一年に『バルタザールの遍歴』で第三回日本ファンタジーノベル大賞を受賞、選考委員に絶賛されてデビューし、その後も明確な方法意識に基づいた精度の高い作品を発表し続けている。『小説のストラテジー』(青土社、二〇〇六年)、『小説のタクティクス』(筑摩書房、二〇一四年)など、評論の仕事も多く、殊に語りや視点に関する考察からは実作者ならではの明確な実験意識がうかがえ、興味深い。
 今回は『吸血鬼』の読解を通じ、著者本人による自作解説もまじえながら、語りとエクリチュールの構造を明らかにしたい。



〈変態〉からみる近代日本精神史

代表者 光石亜由美
進行役 光石亜由美(奈良大学)
発表者 竹内 瑞穂(愛知淑徳大学)
      島村  輝(フェリス女学院大学)
      坪井 秀人(国際日本文化研究センター)
【趣旨】
 変態心理や変態性欲といった概念が積極的に論じられ始めたのは、二〇〇〇年前後である。そこでは近代日本の〈変態〉概念が、精神分析学など当時最先端をゆく学知の集合体だったことが明らかにされてきた。以降、文学研究でもこの概念に着目した論考が散見されるが、ある作家・作品がいかにそれを受容したのかを検証する段階にとどまっているものも少なくない。
 本ラウンドテーブルで試みたいのは、〈変態〉という逸脱を語るための概念を欲望した近代日本の心性そのものを問うことである。発表者たちは、論集『〈変態〉二十面相―もうひとつの近代日本精神史』(六花出版)を先日上梓したが、そこでもとりあげた江戸川乱歩や綿貫六助、阿部定といった〈変態〉と関わり生きた人物たちに再度焦点を当て、この問題についての話題提供としたい。また、テーマは〈変態〉ではあるが、今後の文学研究における文化研究の可能性についても議論したいと考えている。



伊勢物語の古典化――冷泉家流伊勢物語古注研究の再検討――

代表者 梅田  径
進行役 梅田  径(早稲田大学招聘研究員)
発表者 松本  大(奈良大学)
     舘野 文昭(東京家政大学(非))
     猪瀬 千尋(名古屋大学CHT研究員)
【趣旨】
 鎌倉時代中後期に成立したと考えられる伊勢物語注釈の一つに「冷泉家流古注」と呼ばれる一群がある。伊勢物語単独の注釈としては初期に属し、「伊勢物語がどのように古典化されたのか」という問題を考察するにあたって重要な存在であることは間違いない。
 この「冷泉家流古注」は、片桐洋一氏によって紹介されて以来、謡曲や軍記の素材としても用いられた形跡がある重要な注釈であることは広く認められつつも、未だ十分な研究蓄積があるとは言えない。物語、和歌、能楽、軍記といった時代、ジャンルの垣根を越えた総合的な検討が必要であると思われる。
 本グループでは「冷泉家流古注」についての研究会を立ち上げており、本ラウンドはそこで共有された問題点を広く共有したいという目的で開かれる。この機会により広く様々な立場から「冷泉家流古注」の諸問題と課題についてのご意見を賜りたい。



国語科教育の現在――アクティブラーニング、ICTといかに向き合うか

代表者 野中  潤
進行役 野中  潤(都留文科大学)
発表者 南崎 徳彦(横浜隼人中学校・高等学校)
      品田  健(前桜丘中学・高等学校)
【趣旨】
 アクティブラーニングやICT教育などの目新しい言葉を惹句としながら、既存の枠組みを超えたさまざまな教員研修の場が設けられ、活況を呈している。近い将来インターネットが的確な答えをただちに返してくる時代になったら、どのような問いを立てるのかが重要な技能になるだろうし、さまざまな情報がウェブを介して飛び交う時代になれば知をストックすることよりもいかにフローとして扱うかという技能が重要性を増すとも言われている。社会のほとんどすべての仕事現場で電子的なインターフェイスと向き合うことが仕事の実質を支えている時代にあっては、教師のチョーク&トークを生徒がシャープペンシルでノートに書き写すだけの授業は、アナクロニズムであると言うべきなのだろうか。
 こうしたなかで、国語科教育が突き付けられている課題を、教育現場ですでに始まっている変化に焦点を当てながら議論してみたい。



問い合わせ先 日本文学協会
〒170−0005 東京都豊島区南大塚2−17−10   Tel/Fax03−3941−2740
e-mail bungaku1946@piano.ocn.ne.jp

ページトップへのボタン このページのトップへ


Copyright (C)2006 日本文学協会, All Rights Reserved.