■ 第60回日本文学協会国語教育部会夏期研究集会のご案内 ■
日本文学協会国語教育部会
2008年3月、新「学習指導要領」が告示されました。1970年代から続いた「ゆとり」路線は過去のものとされ、「学力向上」が目指されています。しかし、経験重視か学力重視かの振り子をどこで止めるかという二項関係で、論議が繰り返されている構図に変わりはありません。国語科では、基礎的・基本的な知識と技能の習得と、これらを活用して課題を解決するために必要な「思考力・判断力・表現力」の育成が具体的活動例と共に示されています。さらに「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」が設けられましたが、伝統文化の尊重という動向が「改正」教育基本法成立と繋がっていることに注意が必要です。
教室において特に危惧されるのは、「指導事項」のなかで「習得と活用」が、実践していくうえで自己目的化され、学習対象の文脈の掘り起こしが看過されてしまうことです。「学びからの逃走」という事態が指摘されてから既に十余年が経過していますが、「文脈」が裁断されている状況に切り込むことができなければ、児童・生徒は学ぶことの意味を実感できるようにならず、混迷は深まっていくばかりでしょう。
私たちはこれまで「文学教育の根拠」「(読む〉とはどういうことか」というように、文学教育の課題をその根本から問い直してきました。その上にたって、今年の夏期研究集会では、「文学教育の転回と希望―〈文脈〉を掘り起こして―」をテーマとします。文学作品の読みも、読み手に現象した〈文脈〉とは読んだ人に生まれたものであり、客体そのものではありません。その意味で、まず言語論的転回を正面から受け止めなければならないのです。しかしアナーキーと正面から向き合った上で、読むことの〈価値〉をひらくためには、言語論的転回をさらに「転回」しなければなりません。〈文脈〉という表記を用い、「掘り起こす」というサブタイトルを付けるのは、〈文脈〉を実体でもなく非実体でもない、「第三項」(実体性)の問題として問い続けるためです。その営みのなかにこそ、日々の実践に理論が生き、理論が実践をひらく「希望」があると考えます。それは混沌とした状況の奥底を見る〈目〉を育てていくことでもあります。
文学と教育に関心を持つ多くの方々の参加を願ってやみません。
テーマ 文学教育の転回と希望―〈文脈〉を掘り起こして―
日 時 8月9日(土)〜8月10日(日)
会 場 大谷中・高等学校
〒605−0965 京都府京都市東山区今熊野池田町12 TEL. 075−541−1312(代表)
JR京阪「東福寺」駅から徒歩5分 「七条」駅から徒歩10分
地図URL http://60.43.245.139/access/access.html
日 程
9日(土)
12:00〜 受付開始
13:00〜 開会挨拶 進行 齋籐知也(自由の森学園中・高等学校)
13:10〜 講 演 龍村仁(映画「地球交響曲」監督)
14:30〜 基調報告 丹藤博文(愛知教育大学)
15:20〜 シンポジウム 「〈文脈〉を掘り起こして」 司会 佐野正俊(拓殖大学)
篠崎美生子(恵泉女学園大学) 「第三項」で新学習指導要領とたたかえるか?(仮題)
田中 実(都留文科大学) 〈文脈〉について
宮腰 賢(元東京学芸大学) 〈文脈〉は読めるか―ことばにて言はばなべてになりぬべし―
18:00 事務局連絡
10日(日)
午前の部 9:00〜12:00 講座「新学習指導要領と文学の力」(分科会)
小学校分科会 司会 藤原和好(プール学院大学)
橋本博孝(三重大学) 新学習指導要領が期待する「子ども」像
成田信子(関西国際大学) 読む力をいかに育てるか
中学校分科会 司会 齋籐知也(自由の森学園中・高校)
須貝千里(山梨大学) 日比野克彦「絨毯の上のカブトムシ」(中1)・龍村仁「ガイアの知性」(中2)・ 池田晶子「言葉の力」(中3)
中村龍一(都留文科大学非常勤) 〈文脈〉を掘り起こす学習指導過程―詩「おたまじゃくし四五匹」( 草野心平)の授業―
高校分科会 司会 鎌田均(京都産業大学附属中・高校)
馬場重行(県立米沢女子短期大学) 「読むこと」を読む―〈機能としての語り手〉―」
喜谷暢史(法政大学第二中・高校) この世界を〈生きる〉ということ―新たなコンテクストを求めて―
午後の部 13:00〜16:00 実践報告(分科会)
小学校分科会 司会 横山信幸(金城学院大学)
庄司たづ子(紀北町立相賀小学校) 「スイミー」を読む
佐藤久美子(江戸川区立本一色小学校) 「きつねの窓」から〜見えること・会えること〜
中学校分科会 司会 増田修(前富士見中・高校)
五十嵐淳(新潟市立岩室中学校) 「バースデイ・ガール」(村上春樹)をどう読ませたか(仮題)
渡邊美雄(横浜市立大道中学校) 「走れメロス」の語りを読む
高校分科会 司会 青嶋康文(都立南多摩高校)
小林美鈴(木更津工業高等専門学校非常勤)「読む」ことの意味を考える―「おもちゃの蝙蝠」をめぐ って―
奥島寛(大谷中・高校) 安部公房「棒」を用いた授業
全体会 16:00〜16:40 小・中・高実践報告の司会からの分科会報告
閉会挨拶 16:40
参加費 全日参加 3000円(ただし、学生は2000円) 一日参加 1500円(学生は1000円)
注 意・参加費は原則として前納でお願いします。
・下記の郵便口座にお振り込みください。
口座番号 00160−7−23502 日本文学協会国語教育部会
・駐車場の用意はありません。お車での来場はご遠慮ください。
宿 泊 各自でお申し込みをお願いします。
以下は会場近くのホテルです。料金等は直接ホテルにお問い合わせ下さい。
・京都タワーホテル JR京都駅(烏丸口)正面より徒歩1分 シングル 一泊朝食付き 10500円
・京都第二タワーホテル JR京都駅(烏丸口)より徒歩2分 シングル 一泊朝食付き 9450円
・京都タワーホテルアネックス JR京都駅(烏丸口)より徒歩3分 シングル一泊朝食付き 9450円
申し込み JTB京都教育旅行センター 担当:小山・安井
TEL (075)252−3100 FAX (075)252−3107
お問い合わせ 日本文学協会
〒170−0005 豊島区南大塚2−17−10 TEL/FAX 03−3941−2740
e-mail bungaku1946@piano.ocn.ne.jp
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