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7月号特集 書き入れ本研究の可能性


 近世の書物には、書き入れの施されたものがしばしば見られる。書き入れは書物の形態・刊写の別・分野を問わず広く見られ、その内容も多岐にわたるが、校異・語義の注記・出典など本文そのものに関わる情報や、本文理解に関わる先学の説・自身の見解などを記したものが多い。師に就いて古典を理解することが学問の基本であった前近代において、書き入れを施すことが多くの者にとっての学問の出発点であり、よって残された書き入れは、その学習過程および思考過程の生々しい痕跡と言える。批評や感想を記した書き入れからは、その書物に対する当時の読者の反応や理解の実態が浮かび上がるであろうし、その書物の成立事情や伝来状況を示唆したり、現在知られている校訂本文の正統性を揺るがしたりするような、今後の研究にとって無視し得ない書き入れもあろう。
 近年、多くの書物の画像がオンライン上で公開され、書き入れ本一点一点を容易に閲覧できるようになった。ちなみに、国文学研究資料館の国書データベースで検索すると、「書き入れ」では9,459件、「書入」では3,696件がヒットする。これだけ多くの書き入れ本を視界に入れることが可能になった一方で、本文の行間から余白、時に付紙にまで及ぶことのある書き入れの内容を整理して活字化するのが得てして困難なこと、また書き入れが数次にわたる場合や複数人による場合など、その成立事情もしばしば複雑であることなどから、多くの書き入れ本がこれまで検討されないままになっている。
 出版の時代とされる近世にあっても実際に出版に至った著作は全体のごく一部であり、またその版面からは、そこに至るまでの思考過程の多くがそぎ落とされている。そもそも、自らの探究の成果を出版しなかった(しようとも考えなかった)人々は数多い。近世の学問と書物文化の豊かさにより迫るためにも、ここで改めて書き入れ本に着目する意義はあろう。
 書き入れ本自体は近世以外にも見られるが、本特集では、現存数の多い近世の書き入れ本を対象として、書き入れに着目することで何が見えてくるのか、書き入れを研究対象とする際の課題はいかなる点にあるのかといった知見を共有し、書き入れ本を用いた研究の可能性を探りたい。もちろん、中世以前の書物に対する近世の書き入れについての論考も歓迎する。

     記

 一、締切 2025年4月15日(月) 正午必着

 一、応募方法 新投稿規程を参照

『日本文学』編集委員会


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