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9月号特集 文学における〈共同性〉の力学


 近現代文学における共同制作という視座は、これまで作家主義やオリジナリティを相対化する試みとして導入されてきた。新聞・雑誌や出版メディアとの関係性、改稿や校閲という編集上の作業工程、挿絵や図書の装丁といった書物の編纂、「読者投稿欄」などの相互交流の場など、制作の場の〈共同性〉に目が向けられてきたといってよい。その傾向が色濃いものとしては、労働運動や戦後文化運動、戦争や震災等の災害をめぐるさまざまな声を拾い上げて編集する歴史的記憶の「聞き書き」なども視野に入るだろう。創作から編集、流通にまで至る過程で、多面的にそこにかかわる複数の力学が作品の存立に関連している。本特集はそうした制作の場に内在していた〈共同性〉の問い直しを目指している。
 例えばそれは、文化的媒介としての翻訳を通したインターカルチュラルな制作現場などにも認められるだろう。翻訳は、言語や文化を越えるなかで、テクストに創造的変質を生じさせる。言語とその背景となる文化の違いが考慮されるなかでの対象テクストの選択からは、日本国内とは異なる評価が形成されることにもなる。結果として固定されたイメージを解体することにつながるが、それは誤解や歪曲という変質としてよりも、言語や文化間の力学が交錯する共同的な創造として考えることができる。
 しかし一方で、複数の営為が集約される過程には、統一的な意味への方向付けなどの力学が不可避的に付随するだろう。合作や代作という共同制作の場がある一方で、テクストの引用が剽窃や盗用、盗作と評価されてきた問題もある。近現代文学における〈共同性〉という問題について、過去と現在を横断しつつ、複数性によって創造される現場をとらえ直すべく、積極的な投稿を期待する。


     記

 一、締切 2023年6月15日

 一、枚数 35枚(400字詰)以内

『日本文学』編集委員会


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