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3月号特集 古代文学 不安に抗する


 本特集号では、「古代文学 不安に抗する」というテーマで古代文学を考えてみたい。新型コロナウイルスの世界的な流行やロシアによるウクライナ侵略など、人類を取り巻く現今の状況により、私たちは「滅びの不安」に曝されている。これが仮に実際にウイルス感染で死の危機に瀕したり、侵略戦争に巻き込まれたりした人々が直面する「滅び」の感覚そのものではないとしても、その報に曝される私たちも「滅びの不安」に絶えず脅かされているのである。この「滅びの不安」とは何なのか。
 現在を覆うこの漠然とした「不安」は、私たち人間が人間であり続け、社会を存続させ続けることに対しての「不安」の噴出なのではないか。しかし、そもそも人類史においては、これは今まで何度もあった経験であるはずだ。
 本特集号においては、「危機」を問題にするのではなく、その「危機」をきっかけに「不安」に曝された人々が「不安に抗する」ために選択した解決方法を問題にしたい。古代文学を読むことによって、古代の人々がどのように「不安」に向き合い、新たな局面を切り開いて行ったのかを見定めたい。
 例えば、相次ぐ飢饉や疾病流行、反乱をきっかけに自らの皇位の正統性への「不安」に曝された聖武天皇は、仏教に帰依し「国家鎮護」を図ることで天皇たらんとした。『源氏物語』の冷泉帝は、天変地異、母藤壺の死などの凶事が重なるなかで自らの出生の秘事を知らされた時、「学問」にその根拠を求めた。王権に就いた者は「天命」を意識するが故に、解消不可能な「不安」をも抱えていたのではないか。その時、仏法による「国家鎮護」や「学問」が天皇の「不安」を静め、いわば共存する装置となり、「不安とともに存続する」ことを可能にしたとも言えるだろう。
 古代の人々は、このように「根源的な不安」を完全に抑えるのではなく、「不安」に抗いつつ「不安とともに存続する」方法を見いだし、「不安」を乗り越えてきた。今の私たちには、古代文学を読むことによって、先人たちが歩んできた軌跡を辿ることが要請されているのではないだろうか。古代文学から人々が「不安に抗する」方法を問う、意欲的な投稿を期待したい。

     記

 一、締切 2022年12月15日

 一、枚数 35枚(400字詰)以内

『日本文学』編集委員会


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