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9月号特集 近現代社会と変容する身体

 
 明治以降一五〇年。その間に近代国家化が推し進められ、二〇世紀に入る頃からは本格的な工業社会の時代を迎えて賃金労働者・都市中間層が大都市に集中、大衆化したモダン文化が現れた。戦争と高度成長を経た一九七〇年代以降は、脱工業・情報社会へと移行した。更に二〇一〇年代に入ると、工業社会、情報社会に続く日本の将来社会の政策として、サイバー空間とフィジカル空間を接合した新しい社会空間が構想されSociety 5.0と呼ばれるようになった。二〇二〇年に始まったコロナ禍は、こうした社会構想に拍車をかけたといえよう。人々はソーシャル・ディスタンスを強いられ、テレワークや遠隔授業、飲食店の仕切りにいたるまで、物・情報を介して個々の身体が分断されながら接続されることが常態化した一方、医療・福祉・流通などの領域では、より過酷な〈現場〉に曝される身体の存在が顕在化した。
 日本の近現代一五〇年をふりかえると、近代国家化、文明開化、工業化、モダン都市、戦時体制化、占領、大衆消費社会、郊外化、サイバー空間など、時代ごとに社会に特徴的な形を与えた制度・規範・都市空間・情報通信技術・活動様式などが現れている。そうした社会との関わりで、個々の身体あるいは階級・階層など社会的属性をまとった身体が、どのように表象されてきたか。ここでいう「身体」は感覚し意識する主体でもあれば、社会や他者によって客体化された肉体でもありうる。こうしたことはこれまでにも様々なテーマで論じられてきた。立身出世主義と個の身体。近代都市空間の中の、あるいはその外へと移動・放浪する身体。資本主義経済機構と労働する身体。家族制度や学校、居住空間のなかの身体。恋愛・結婚規範と身体。ケアする/される身体。社会を消失したセカイ系の身体、などなど。社会との関わりのなかに置かれた身体の具体相が、時代によって変化する社会の形に対応しながら多様に表象されてきたことをあらためて問いたい。
 本特集では「社会と身体」の関連をテーマとし、独自に問題設定した意欲的な投稿を期待したい。特定の時代の社会的制約と身体との関係でも、通時的な変遷を視野にした社会と身体の関係でもよい。それを通じて近現代社会の変遷と身体の関わりを歴史的に展望し、現在の社会と身体の関係を考える機会としたい。
     
              記
 
 一、締切 2022年6月15日

 一、枚数 35枚(400字詰)以内

『日本文学』編集委員会


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