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5月号特集 中世文学と東国

 
   ちょうど今から八百年前に起きた承久の乱を契機として、鎌倉を中心とした東国は文化・政治・経済を担う地位を確立した。そこで、今特集号では東国にスポットを当ててみたい。
 京と鎌倉の往還が容易になると、西行・阿仏尼・後深草院二条・兼好ら著名な作品を著した人々も東国に赴いた。また、東国武士と京の歌人との交流も盛んになり、藤原定家や為家・光俊の指導の下に源実朝や宗尊親王が成長した。さらには、『新和歌集』・『東撰六帖』・『夫木抄』等注目すべき私撰集も編まれた。
 鎌倉では、仙覚の万葉学や源光行・親行父子の源氏学等の研究も盛んに行われた。金澤文庫や足利学校に象徴されるように東国では学問も盛んだったのだ。鎌倉時代末・南北朝時代に、個性的な注釈や仮託書・偽書が数多く誕生したのも東国だった。
 同じ頃、東国の在地性、東国人の観点が反映された作品が登場する。独特な共通真名表記を有する三作品『神道集』・真名本『曾我物語』・『四部合戦状本平家物語』や、千葉氏周辺の人物の手による編集かと推定される『源平闘諍録』が誕生したのだ。
 もちろん、室町時代になっても京の知識は東国にもたらされ続けた。その役割は多く連歌師が担った。宗祇は応仁の乱の戦乱を避けて東国に疎開した際、上野白井の城主長尾氏に『吾妻問答』を贈っているし、宗長の『東路のつと』からは東国での和歌・連歌が盛んに行われていたことが知られる。
 連歌師を通じて東国にもたらされた知識も反映された興味深い作品が下総国で生まれた。室町時代成立の私撰集『雲玉和歌抄』は和歌・注釈・説話・伝承等様々な要素を併せ持ち、中世文学の問題を考える上で興味深いテクストとなっている。
 これ以外にも、中世東国の宗教テクストの問題、作中に描かれた東国像や東国観の問題、東国における作品の書写や流布の問題など、中世文学と東国というテーマからは様々な問題が見えてくるのではないかと思う。中世文学の魅力と研究課題を提示する積極的な投稿を期待したい。

           

        記


 一、締切 2022年2月15日

 一、枚数 35枚(400字詰)以内

『日本文学』編集委員会


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