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3月号特集 古代文学の〈距離〉とコミュニケーション

 
  新型コロナウイルス感染症の猛威は我々の生活を大きく変えてしまった。「ディスタンス」という語が盛んに叫ばれたように、このウイルスは人と人との間に物理的・精神的な〈距離〉を生み出した。一方で、オンラインの活用をはじめ様々な手段によるコミュニケーションも図られた。コロナ禍は人と人との〈距離〉を生み出すと同時に、それを超えるためのコミュニケーションのあり方を我々に考えさせる契機となったともいえよう。
 それでは、そうした我々の前に、古代文学はどのような姿を見せてくれるだろうか。古代文学からは、殿上人と地下、儀式の席次など、律令国家特有の秩序としての〈距離〉を読み取るができる。一方で、個人の欲望と秩序とのせめぎあいが生じる瞬間が描かれることがあり、そこから作品独自の〈距離〉に対する意識も見出せよう。
 和歌によるコミュニケーションの問題も重要である。例えば、羈旅歌は誰に向かって詠まれたものなのだろうか。『万葉集』の大事なモチーフに「使い」があるが、「使い」が「歌」を届けるとするならば、「歌」は文字で伝達されたのだろうか、「使い」が唱詠する形で伝えられたのだろうか。文字で「書かれる」歌と「唱詠される」歌に表れる〈距離〉も大きな問題である。
 あるいは、恋の場面においてはどうだろうか。平安時代の姫君たちは、幾重もの屏障具によって男性たちから隔てられていた。そこで詠まれる和歌は、物理的・精神的な〈距離〉を埋めるだけでなく、文として長く遺れば時間的な〈距離〉をも超えることになる。和歌と同様に音楽もまた、男女間の〈距離〉を超えてゆく重要な手段であった。演奏とともに謡われる歌謡や各楽器の特徴を踏まえることで、これまでは気づかなかった〈距離〉の超え方・交情のありようが見えてくるかもしれない。
 人と人との〈距離〉を経験した今だからこそ、古代文学における様々な〈距離〉について考えてみたい。
    

     記


 一、締切 2021年12月15日

 一、枚数 35枚(400字詰)以内

『日本文学』編集委員会


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