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10月号特集 二一世紀における「若者」表象――「距離」「乖離」「虚無」

 
   近代以降、新しい世代の表象は、文学の主要なテーマの一つであった。一般的には「最近の若者」として概括されがちであるのに対して、文学はそれぞれの時代における若者の多様な様相を個別具体的に描いてきた。 
 二〇世紀後半に入り、消費社会が成熟するにつれて「若者」は市場のターゲットとなった。同時に、進学率の上昇にともない教育行政の主たる対象にもなった「若者」は、「しらけ世代」「バブル世代」など「世代」によって表象されるようになり、二〇〇〇年代にかけては「ゆとり世代」「さとり世代」などと次々に名付けられた。  一方、現代小説に目を向けると、小山田浩子の「穴」では、「フラット化」された地方都市における新しい形の専業主婦表象が見られ、村田沙耶香の「コンビニ人間」では、積極的に「非正規労働」にコミットしてゆくアイロニックな若者像が提示された。これらの「若者」表象は、メディアが描いてきた若者像とどのような距離があるのだろうか。あるいは、宇佐見りんの語りの肉体性から私たちは何を受けとめればいいのだろうか。「メトロセクシャル」を前提にした時代に誕生した羽田圭介や遠野遥の小説には、肉体鍛錬に象徴されるストイックで動物化志向とでも言うべきものがみられる。社会が要請する指標への過度の依存は一種の「病」となり、社会との乖離をもたらす。「リア充」なのに満たされないという情況は、破局を招き寄せて虚無に至る。これらを「若者表象」一般に対する当事者からの違和の表明として受けとめることは可能だろうか。 
 本特集では、小説に限らず近現代文学全般における「若者表象」の再検討を試みる。そして、社会学、教育学、歴史学、ジェンダー・スタディーズなどの領域横断的な眼差しとともにその諸相や系譜を明らかにし、未来の思想的課題を考える手がかりとしたい。会員諸氏の意欲的な投稿を期待する。

     記

 一、締切 2021年7月15日
 一、枚数 35枚(400字詰)以内

『日本文学』編集委員会


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