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11月号特集  フェミニズム/ジェンダー
――フェミニズム再燃のなかで、「家父長制」の視点から文学を再考する――

 
    現在、世界的な#MeToo運動の高まりのなかで、日本でも身近な女性差別への批判や性犯罪に抗議するフラワーデモ等に象徴される新たなフェミニズムの波が広範な層に浸透しつつある。この動きに連動するように、『文藝』『早稲田文学』『現代思想』『思想』等で相次いでフェミニズム特集が組まれ、現代社会の実態を問い直す思想的・学術的なものから、ファッション誌やマンガ、テレビドラマにおけるものまで、実に幅広く多様な分析がなされている。
 さらには、近年では翻訳を通じて「韓国フェミニズム」の運動や作品が積極的に紹介され、例えばチョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』、イ・ミンギョン『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』等の作品が、多くの日本の読者に受け入れられている。特にフェミニズムの活動においては韓国よりも先んじていると思ってきた多くの人が同国におけるフェミニズム運動を知り、またそこで書かれた小説の作中人物の境遇に共感することで、新自由主義の言説や法整備による「男女平等」によって可視化されてこなかった現代日本社会における「家父長制」の構造に再び目を向ける一つのきっかけとなった。
 一方、日本の文学状況に目を向けると、多和田葉子、角田光代、川上未映子、小山田浩子、村田沙耶香など、「家父長制」を背景にマイノリティの視点を取り入れた優れた書き手たちが活躍してきており、フェミニズム再燃のなかで、「家父長制」の問題を再考する下地が形成されつつあるとは言えないだろうか。彼女たちは、ディストピア小説の枠組みや幻想の力を使用するなどして社会における様々な抑圧や排除の問題を実験的に作品化している。
 しかし、より広い意味でのマイノリティの連帯をめざす、現在の第四とも言われるフェミニズム運動の波が起きつつある渦中にあってなお、「家父長制」はかたちを変えて日本社会の深層で機能し続けている。文学研究は、この状況にどのような態度を取り、また働きかけることができるのだろうか。資本やメディア、幅広いポピュラーカルチャーと親和性を持ちやすいとされる現在の動向のなかで、なぜあえて文学なのかという問いにも向き合いつつ、真の複数性や包摂性、あるいは、異なる背景をもつ他者との共生や連帯について、現代文学の場から再考することによって、膠着する現状に新たな視角を切り開くような論考を期待している。

     記

 一、締切 2020年8月15日
 一、枚数 35枚(400字詰)以内

『日本文学』編集委員会


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