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10月号特集 近世文学における親子・家族

 
   本特集では、近世文学において親子・家族がどのように捉えられ、描き出されてきたのかを改めて問い、その諸相の再発見を狙う。
 近世文学における親子・家族の描かれ方の一例として、たとえば次のようなものがある。両親ともに深く我が子を愛することに変わりはない。父親は子の成長を願って厳しく向き合うあまり、表面上衝突することが多く、母親は愛情を率直に表現するが、甘やかしがちである。子はそうした親の姿にあるいは反発し、あるいは増長する。その先に悲劇、喜劇が生まれる。現代の作品にも見られるこうした親子関係のイメージは、江戸時代の戯作や演劇にしばしば見られる典型の一つと言える。また、義理の親子関係として、古今東西を問わず広く見いだされる継子いじめ譚はもちろんだが、近世文学では逆に「なさぬ仲」であるからこそ実の親子以上に互いを思い合うという姿も、典型の一つに挙げられる。他にもまだ例は挙げられようが、このような親子関係のいくつかの典型が安定したイメージとして江戸時代の人々に共有されたからこそ生まれる名場面や、表現があるだろう。親子の情愛を描く浄瑠璃や歌舞伎の愁嘆場、川柳句、落語の人情話など、例は枚挙にいとまが無い。ただ、類型と思われるものであっても、改めて設定や表現の細かな差異に注目すれば、個々の表現や場面の魅力、作品の特質などを新たに見いだすことも可能である。
 一方で、典型には収まらない親子のかたちが注目される場合も当然あろう。たとえば『女殺油地獄』において、与兵衛に対して自分が元は「下人筋」である故の遠慮がある義父徳兵衛の甘やかしが、与兵衛の増長と非行を招くという特徴的な親子関係は、内面に不安定さを抱えた与兵衛の人物造形に密接に関わる。その関係性をどう読み解くかが作品全体の理解をも左右する。
 このように近世文学に描かれる親子・家族の諸相を改めて掘り起こしつつ、そこに認められる典型と、そこからのずれの両面に注目することによって、個々の表現や場面の特徴、魅力を浮き彫りにし、ひいてはそれぞれの作品、ジャンルとしての特質にまで迫りたい。

     記

 一、締切 2018年7月20日
 一、枚数 35枚(400字詰)程度

『日本文学』編集委員会


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