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10月号特集 近世文芸における師弟

 
   近世文芸の特徴は先行文芸の理解・研究およびその利用と新たな形象にあり、従ってそこには学芸を伝達する師の指導・影響と、それを継承し発展させる弟子との間の特色が濃く反映される。また、とりわけ多くのジャンルを生んだ近世文芸においては、師弟関係のありさまも多様である。
 近世においてはまず、伝統的な文芸や学問の継承の場のありようが変化した。堂上では御所伝授が確立し、後水尾院・霊元院を頂点とする歌壇において歌の添削や批評が活発に行われた。地下の貞徳・季吟・盤斎らは、幽斎の学問を継承しながらも多様な古典注釈を残し、以後に続く新たな古典学を形成する。
 師は弟子の才能をどう評価し、指導したか。例えば談林俳諧の宗因は惟中の学識を評価し、西鶴に対してはその「軽口」を褒めた。結果、惟中は談林随一の論客として活躍し、西鶴は矢数俳諧に励み浮世草子を創作する。師の指導と同様に、門人の解釈も必ずしも一様ではない。特に芭蕉の俳論は少なく、直門であっても理解が異なり論争が交わされたが、むしろその多様な理解が芭蕉の名声を高めたといってもよい。
 歌舞伎では師弟のつながりが特に濃厚に顕れる。芸の継承の必要があるからである。ただし、近世ではそれは必ずしも血縁関係や名跡の襲名とは一致しない。歌舞伎以外にも、戯作者や俳諧師等の「襲名」についても考えたい。
 もちろん師弟関係は生きた人間に限らない。宣長の没後門人となった篤胤や、京伝・馬琴に私淑した春水、あるいは秋成の俳諧における宗因や鬼貫、来山等に対する意識など、「私淑」の例も含め、作者が「師」と仰いだ人物、著作から受けた影響をも考える必要があろう。
 本特集では、作者の文芸創作に多大な影響を与え、その根幹を形成した師弟関係に改めて着目し、広くその諸相を捉え、近世文芸の本質に迫りたい。

     記

 一、締切 2017年7月20日
 一、枚数 35枚(400字詰)程度

『日本文学』編集委員会


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