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11月号特集 政治と文学が協働する場所
――プロレタリア文学を読みなおす

   
 
 今から六年前の二〇〇八年、ワーキングプアや貧困ビジネスなどの社会問題が露呈する現実のなかで、およそ八〇年前に書かれていた「蟹工船」が再発見された。しかし今や、その問いかけが読みなおされ、評価されようとしたことすら忘れ去られようとしている。昭和戦前期の景気変動、戦後の高度経済成長とバブル経済など、好況の時期には貧困と階級の記憶は経済、あるいは政治によって覆い隠されてしまうが、プロレタリア文学が貧困と階級それ自体への思考と想像力をアーカイブ化してきたことの意味は大きい。なぜなら生まれてから一度も好景気を実感したことのない若い読者にとっては、「蟹工船」は現代社会と地続きのリアルだからである。格差を生きる日常の無力感や空虚感を、ウェブ空間に表出するのも、「ポエム」化して解消=忘却しようとするのも、文学的な営為とはみなされがたい行為だが、これを文学における協働性の問題として考え直すことができるかもしれない。プロレタリア文学が再発見されるに至った背景には、こうした現代のプレカリアート(新自由主義の下、不安定な生を強いられている人々)の存在と表現の問題が横たわっていることを無視するわけにはいかない。
 近代から現代までの多様な方法による表現を視野に入れて、プロレタリア文学として読みなおすに際して、政治と文学という古めかしい表現を用いたのは、政治と文学を対立項として見出したいからではない。そこにある協働の可能性と限界について考え直したいからである。政治と文学のアクチュアルな課題が現出するプロレタリア文学を三・一一以後に読み直す意義もそこにあろう。想定される切り口としては、読者と作者の関係性、特にプロレタリア文学に特有の雑誌や新聞という場、エリート指導者の功罪、共同製作やアンソロジー、集団アピールやパンフレットの取り組みなど、現在の問題にもつながる協働性などがあろう。コミンテルンに従属した「プロレタリア文学」が切り捨てたプロレタリア文学――アナキズムやアヴァンギャルド――との接点にも視野を広げたい。
 政治と文学が協働する場としてのプロレタリア文学を新たな関係性のなかで捉え直す意欲的な投稿を期待する。
  

      記


  一、締切 2014年8月20日
  一、枚数 35枚(400字詰)程度

『日本文学』編集委員会


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