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8月号特集 〈文脈〉を掘り起こす――文学教育と〈語り〉


 「「生きる力」をはぐくむ」ことを標榜する新学習指導要領が高校でも実働化される。教室の中で〈ことば〉を学ぶ営みが、どのような「生きる力」の獲得に繋がるのか、今その根拠が問われている。
 教育が文学に求める重要な要素の一つに、「読むこと」によってその成長が促される自己の発見がある。「読むこと」は、対象とする〈本文〉との格闘を経て、読み手が内奥に潜む自己と対話し、その内なる自己との出会いを通じて〈他者〉を遠望する回路を見出す行為である。「読むこと」は、〈本文〉との関係に対する思考を読み手に強いる。優れた文学作品が内包する〈本文〉の力によって想定されなかった自己と出会い、それまでの自己を相対化し〈他者〉の発見にときめく、こうした心の震えるような読書は、「読むこと」の原初的あり方として誰もが経験してきたことであろう。しかし、読書行為のアナーキーが喧伝され、恣意的な「解釈ゲーム」に翻弄される時代にあって、「読むこと」の原理を問うことは未だ十分に展開されているとは言いがたい。文学教育の現状は、「言語技術」や「ナラトロジー理論」、あるいは「文化研究」の援用といった形で推移し、問題の根底への問いかけを脆弱化させたまま、状況に流されてきたと言わざるを得ない。この潮流を絶たねば、文学教育の未来はないと考える。
 文学教育の本来的な力は、いかにすれば発揮できるのか。ここ数年、国語教育部会が取り組んできた研究の方向性を継承・発展させ、更なるステージを展望するために、再び「〈文脈〉を掘り起こす」をテーマに掲げ、「「読むこと」の現場」をより深く考察したいと思う。「読むこと」の原理とはどのようなものなのか。そこで問われるべき課題とは何か。実践との架橋を実現させるために、いまなされるべきはいかなる作業なのか。〈文脈〉を掘り起こし、特に〈語り〉に注目し、その意味や意義を問い直すことを通して「読むこと」の原理を追究していきたい。それは、教室の実践の根底にある難問を明らかにし、明日の教室を拓くための隘路を拡張させることにも通じる営みなのである。
 積極的な論考をお寄せいただきたいと心から願うものである。
     記
 一、締切 2010年5月20日
 一、枚数 35枚(400字詰)程度 

『日本文学』編集委員会


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