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6月号特集 人類と異類――古代文学から――

   人は、動物と関わりながら暮らしてきた。食用・実用から愛玩用にいたるまで、人と動物は密接に結びついてきた。その結びつきの中で動物は、人の精神生活にも多大な影響を及ぼしたと言える。祭祀のための供儀には、特別な意味が付与されたし、動物そのものの神格化もおこった。また、実見したものではなく、舶来の典籍や文物で知見を得た動物(駱駝・虎・象・麒麟など)も特別な意味を持った。それらの「異類」は、従来の「神」「もののけ」などと重なりながらも、異なる問題群として措定される必要があろう。
 人は、「人類」と切り離されたものとして「異類」を認識しつつ、通行可能なものとして「異類」と関わり、その相克の中で物語を紡いできた。一般に異類婚姻譚として定位される題材も、「人類」と「異類」との相克の物語として捉えることができよう。記紀の神話・説話や、『風土記』説話における動物像についても、「人類」と「異類」との相克の物語と捉えられる説話は多い。『日本霊異記』では、人間が畜生に転生したり、畜生が人語を話したりする。仏教の導入によって、「人類」と「異類」との関係が変容した可能性があり、また同時に、普遍化した部分もあるだろう。
 詩歌の題材としての動物(鳥など)は、景に特別な意味を付与するし、鳥の声を人語として解そうとする聞きなしも行われる。そういった「異類」との通行が「美景」を現出させる。他に、万葉集巻十六「乞食者の詠」は、蟹と鹿の痛みをうたう特異な和歌となっている。供儀論などからの考察が望まれる。
 古代後期でも、『古今集』をはじめとする和歌における動物を「異類」として捉え直すことが問題となろう。また、愛玩動物の「異類」への位相転換が描かれる作品もある。『源氏物語』で柏木の夢に現れた猫、『更級日記』の大納言の姫君が転生した猫など。後者は、転生という回路による「人類」と「異類」の相克でもあり、『日本霊異記』の問題とつながっている。『大鏡』の伝える、三条院に眼疾をもたらした、(元は僧だが)どうやら鳥の姿をしていたらしい物の怪なども同じ問題系に入れられよう。
 「異類」について、もう一度捉え直し、文学における「異類」の位相を掘り下げたい。多くのご投稿を期待している。
     


      記
  一、締切 2009年3月20日
  一、枚数 30枚(400字詰)程度

『日本文学』編集委員会


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