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5月号特集 病と文学

 
 本特集号では、「病と文学」について考えてみたい。新型コロナウイルスの世界的な流行は、現在に至るまで様々な問題を顕在化させているが、こと「文学」に関しては、その不在をより強く意識せざるを得ない。
 災害列島にあって、「文学」は、我々の社会がいかに脆い基盤のうえに成り立っているかを繰り返し描いて来た。しかし、近年世界で起こった伝染病などの病については、その流行を奇跡的に免れてきたゆえに、どこか他人事であったうえ、「自然」と同様、「病」が「科学」によって統御できるという思い上がりがあったのではないか。
 一方、今日の新型コロナウイルスの流行を「文学」的な視点で微分化すれば、様々な問題が浮かび上がる。例えば、「戦争」などといった比喩。はたしてウイルスは「敵」なのか。「戦争」と同様、病との「戦い」も、「敵」をつくることで社会統制を強め、人々の犠牲を正当化し、逆説的に「英雄」を生み出してはいないか。
 新型コロナウイルスの世界的なパンデミックの背景には人類の広範囲の移動があると言われているが、それは「移動」なしには成立しない現代社会の根本的な問題が突きつけられたようでもあったし、そもそも病は人類の進化とともにあった。この点をふまえれば、病は「敵」などではなく、付き合っていかなければならない存在であるだけではなく、病は自らの生と、その一部としての死を再確認させ、同時にこれまでの生活や生き方、社会を見直すことを促すものともなるはずだ。
 列島の人々は文学という手段を獲得して以降、多くの「病」について書いてきた。人々は「病」をどのように認識し、表象したのか。書かれた「病」から、浮かび上がってくる構造はどのようなものか。あるいはそれらを今、どういった眼差しのもとに読み返すことができるか。日本文学における「病」論は、まだまだ多くの可能性がある。本特集では、病と文学について、時代やジャンルを超えて日本文学から社会にひらく論考を期待したい。
    

      記

 一、締切 2021年2月15日
 一、枚数 35枚(400字詰)以内

『日本文学』編集委員会


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