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7月号特集 文献学をとらえ直す  

 

  日本文献学の基礎は池田亀鑑が確立した。現在でも、この手法を発展的に継承し、現存諸本の本文を精査することを通して、散逸伝本の復元・古態本の追究・異本の生成の検討・校本の作成といった、様々な重要な成果が挙げられている。
 一例を掲げよう。『平家物語』諸本の本文の検討から、応永書写延慶本に覚一本系本文が混入していることが証明された。また、定家本『古今和歌集』は自身の研究成果に基づき俊成本を改訂したものであることや、古筆切の調査から現存『新古今和歌集』未載の和歌がかつては入集していた例があることも明らかにされた。舞台の様子を見て台本を修正するという演劇特有の特徴が謡本にも認められるという指摘も成果の一つである。文献学はテクスト分析に必要不可欠な研究なのだ。
 この点を理解しつつも、昨今の文献学のあり方を批判的に見る考え方もあるのではないか。例えば、詳細な本文研究は専門外の人には理解し難いために、いわゆる蛸壺型の研究を推し進めてしまっているのではないか、あるいは作品の全体像にさして影響を与えているとは思えない部分的な本文異同の検討や研究者の判断に基づく部分的な古態の認定に、どれほどの意義があるのか、といった批判である。精緻を極めた研究が貴重な成果を生み出してきた一方で、壁を築き、限られた専門家だけの世界を構築してしまってきた面があることも確かであろう。
 古典文学研究の価値が問い直される現在、文献学研究はどのようになされればよいのだろうか。中等教育との連携、デジタル化や国際化等の時代の変化にどう対応すればよいのか。従来の研究の利点だけでなく、今後の研究・教育との関わり方をも視野に収めた多様な論を期待したい。


           記


  一、締切 2020年4月20日
  一、枚数 35枚(400字詰)以内

『日本文学』編集委員会


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