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5月号特集 注釈がひらく古代文学  

 

 古代文学には分厚い注釈史の堆積があり、現代の研究者もそれらを無視して研究をすることは不可能である。今回の古代文学特集では、多様な切り口から注釈の持つ意味にアプローチしたい。
 注釈は、「注釈書」という書物の成立をもって始まったわけではない。『日本書紀』や『古事記』の訓注や異伝、『万葉集』の左注なども注釈とみなすことができるだろうし、本文生成の過程で付けられる割注や傍注なども、注釈の原初的な形態と考えることができよう。作品の生成とともに、注釈という行為は始まっているのである。
 『源氏物語』を例にとれば、中世以降多くの注釈書が生み出されてきた。これらの注釈書は、それぞれの時代の『源氏物語』享受のありようを映し出し、注釈者がどのようにこの物語と向き合ったのかを明らかにしている。貴族社会の所産である『源氏物語』の場合には、注釈する行為そのものが、貴族社会の知の集積と継承という意味を持っていた。
 また、中世の伊勢物語注にみられるように、注釈がテキストから離れて秘儀的な色彩を帯びてくる場合もある。それに類似するものとして、中世日本紀と呼ばれる一連の注釈では、注釈することが新たなテキスト生成と結びついていたことも想起される。
 一方、注釈は研究者のためだけに存在するものではないことも忘れてはならないだろう。現代の読者にとって、馴染みのない古典への入り口となるのが注釈である。古典の教科書の注も、注釈のひとつとみなすことができよう。教育現場で、そして生涯学習の場で、古代文学の世界へと読者をいざなうためには、注釈はどうあるべきなのだろうか。これまでの注釈が担ってきた役割を考察すると同時に、これからの注釈のあるべき姿を示唆するような論考が寄せられることを期待したい。
     

 
  一、締切 2020年2月20日
  一、枚数 35枚(400字詰)程度

『日本文学』編集委員会


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