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10月号特集  近世における文学と地名

 
 地名には、信仰心、美意識、歴史意識、社会的な事件など、さまざまな人間の思考や営みの残像が凝縮されている。古くから知的好奇心の対象であった地名は、創造的活動を促すきっかけとなり、散文においては、地名起源説話を形成し、物語や随筆、戯作に取り込まれていった。また、韻文においては、名歌・名句を生み出し、それが長く記憶され歌枕や俳枕となり、新たな文学を再生産してきた。とりわけ交通網や情報網が発達し、各地の領国意識が高まった近世期には、たくさんの地名に関係する表象文化が花開いた。
 諸藩は藩の創生の物語や系譜を明らかにし領土や統治の正統性を証するために、時には地名を新たに設定しそこにあたかも古くから伝えられているかのような物語を付与した。たくさんの国絵図や地誌が作成され、由緒ある地名が名所として具体的に地図上に策定された。その結果、「近江八景」や「深浦十二景」など、風景鑑賞の計量化も盛んになり、景観詩歌や図画が制作された。江戸時代中期以降は、本草学の発達とともに各地の産物が名物として流通しはじめ、地名イメージは産業の発達にも寄与していった。
 近世期において、地名は、単なる場所を指定する名称という以上に、多様な内実とイメージ喚起力を有する文化的リテラシーとして旅人や地元の人々の想像力を刺激するものだったといえる。そしてそのことは明治大正昭和平成の時代を経て、現代社会における歴史認識や景観論、さらには観光振興や町づくり論に接続していく。
 本号では、地名や土地に関連する文学的表象を可視化し、地名や地域意識に基づく文化や思想と近世文学の関わりを問い直したい。地名や名所の形成、土地の伝承など、地名という光源からさまざまな文学的表象を照らし出す幅広い視点の論考を期待する。

     記

 一、締切 2020年7月15日
 一、枚数 35枚(400字詰)以内

『日本文学』編集委員会


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