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10月号特集  近世文学における規範・型

 
   近世において、俗文芸の多くは「規範」としての雅文芸を踏まえ、それをあえてずらしたり、新たな解釈を加えたりして成立している。また上代から中世までの長い蓄積によって、文学作品の表現や内容にいくつもの類型や定型といった「型」が作り上げられてもきた。近世には散文・韻文・演劇などの幅広いジャンルで、そうした規範や型の上に創作性を加味していく作品のあり方を見て取ることができるのである。一方、和歌や漢詩文といった雅文芸もまた、先人たちによって築き上げられ、継承されてきた伝統的な美意識を規範とし、定型を踏襲して作られている。
 ジャンルの細分化に伴い、規範や型の種類も増えていく。俳諧、仮名草子、浮世草子、読本、洒落本、人情本、滑稽本、草双紙、浄瑠璃、歌舞伎などのそれぞれのうちに規範や型と呼べるものが存在し、各々が複雑に絡み合う。規範として雅を意識して俗を詠む俳諧は、詠み込む語や音数に確固たる型を持つ。浄瑠璃の七五調は音数の定型であり、歌舞伎のお家騒動や「実は」の発想も型と言えよう。ジャンルや個々の作品の問題に留まらず、たとえば読本における半紙本、中本の書型とその内容との相関性など、造本や出版のあり方という点においても規範・型をめぐる意識は強く働いている。こうした規範や型をめぐる意識は近代になると希薄になっていく。近世は、規範・型が積み重なり、それらが強く意識されていた、規範・型の充実の時代と言ってもよい。
 規範・型にはときに模倣や二番煎じといった否定的評価が下されもするが、規範や型があるからこそ、その逸脱に意味が生じたり、そこに収まりきらないものとして何かを強調して表現したりすることも可能になる。
 本特集では、近世文学の根幹をなす規範・型に改めて注目し、広くその諸相を捉え、近世文学の特質を浮き彫りにしたい。

     記

 一、締切 2019年7月20日
 一、枚数 35枚(400字詰)以内

『日本文学』編集委員会


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