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5月号特集  伝承世界をめぐって

 
  古代文学には、韻文・散文とも、〈いにしえ〉からの〈伝承〉という様式をとって提示される作品がある。これは〈古代〉にとって、〈現代〉ではなく〈過去〉からの物語を語り継いでいるのだ、という様式が必要とされたということであろう。それらの〈伝承〉という体裁をとった言説をどのようにとらえるかということは、古代文学の世界を研究者がどのように規程・把握するかというありかたに関わっている。
 例えば、古代史研究には、「在地伝承」という研究概念がある。これは〈伝承世界〉が特定の地域と分かちがたく存在し、その地域固有の伝承として生成し定着した、という考え方である。「在地伝承」論は古代の〈伝承世界〉を〈実態〉としてとらえることを前提として成り立っている言説であろう。これに対して、〈伝承世界〉を〈型〉として捉えると、異なる地域に同じ〈型〉の伝承が使われ、類似の伝承が多くの地域に分布することになる。ここでの〈伝承世界〉はあくまでも様式であり意匠である、ということになる。そこからは、〈型〉を駆使する知識層がどこから〈様式〉や〈意匠〉を獲得したか、という問題が浮かび上がってくる。
 ここで〈伝承〉の〈世界〉を伝達するものは「口承」なのか「文字」なのか、という問題も想定される。村落における「古老」の口伝えを素朴に想定するか、知識層の執筆したメモの流通を前提にするかで、両者の持つ古代像は異なる。もちろん〈伝承〉の内容も問題になる。氏族の起源伝承、恋愛の伝承、地名起源伝承、怪異にまつわる伝承などの多様な〈伝承世界〉は、〈非文字世界〉と〈文字世界〉の狭間でどのように結実していったか、考察したい。
 また、〈伝承世界〉は多数の異伝・異文を生み出している。和歌・物語・説話などで生じる異伝・異文の世界を、〈伝承世界〉を踏まえてどのように考えるかということは、重要な問題たりうるだろう。
 清新かつ斬新な論考をお寄せ頂きたい。


           記

 
  一、締切 2017年2月20日
  一、枚数 35枚(400字詰)程度

『日本文学』編集委員会


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