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7月号特集 危機と対峙する中世文学

 
   いつの時代でも危機は、人々の営みと関わり合って登場し、叙述や表現の契機になり、「文学」を生み出す原動力ともなった。そこに生み出された文学は時代の生命力そのものであり、時代の危機を捉えた「文学」でもある。遙か数百年前の中世という時代においても、危機と対峙した人々の営みである「文学」は、静観という立場や道理を立てて次なる時代を模索し、あるいは破壊や壊滅の後、再興や再生を願うことにより伝える、未来への生命力が読み取れる。さらに「文学」テクストの発信により、時代にメッセージを発し、人々を一つの方向に動かそうとする試みも見出せよう。
 中世という時代の危機に目を向けると、応仁文明の乱が続くなか、一条兼良は古典研究で貴重な成果を残した。南北朝の動乱の渦中で、連歌・和歌等の復興に努めた二条良基も目を見張る存在であろう。建礼門院右京大夫は戦乱で失った恋人への追悼の念を表現し、夫を処刑された日野名子は遺児を守る生活を描いた。慈円は『愚管抄』で武士の時代にどう関わるべきか論じた。中世の歴史物語も時代の危機を捉え、表現していよう。戦乱が題材の軍記物語は、苦難に向き合う人々を描き出す。「紅旗征戎非吾事」と源平の合戦を記さないことを宣言した藤原定家、福原遷都の責任者を書かない鴨長明の姿勢も危機への対処として挙げられよう。危機の要因を末法に見出し、その救済にあたった僧達の法語もその表れと考えられる。
 中世の人々がその時代の危機にどのように対処したか。文学的営みを通じ時代の危機とどう対峙したか。危機のなかに見出される次代への生命力の一端を、中世に残された記憶の痕跡から明らかにしたい。多様なジャンルの研究者からの積極的な投稿を期待している。

     記

 一、締切 2016年4月20日
 一、枚数 35枚(400字詰)程度

『日本文学』編集委員会


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