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図書館と文学――保存・検閲・スキャンダル

 
  
 有川浩『図書館戦争』は、権力による検閲と思想善導の機関と化した戦前の図書館の在り方に対する反省から、戦後、その自主独立を掲げて制定された「図書館の自由に関する宣言」(一九五四年採択、一九七九年改訂)にあらためて光を当てた。そこでは「図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする」「図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る」との文言が盛り込まれている。
 図書館は文学的記憶を保存する重要な公共財である。だが『図書館戦争』に描かれているように、図書館は物語や資料のアーカイブとしての静謐な記憶の場所という意味だけではなく、しばしば抗争が惹起される現場ともなっている。近年では、柳美里「石に泳ぐ魚」事件、「はだしのゲン」事件、「アンネの日記」事件など、読者の「知る自由」が脅かされ、そこに露呈する歴史、記憶、政治の連関を問い直さねばならぬような事件が相次いでいる。さらに、全国で進む図書館の民営化(例えば「TSUTAYA図書館」)には、図書館の運営主体が誰であるのかという問題も投げかけられている。「表現の自由」は「知る自由」に支えられていなくてはならない。その「知る自由」が、歴史や記憶とともに、いま危機にさらされている。
 今回の特集では、図書館という場所の持つ問題性と文学との接点を探りたい。ここで言う〈図書館〉には当然、作家を顕彰する記念館、文学館を含むとすれば、文学と地方行政、観光振興の問題系も絡んでこよう。大学における人文学系学問の危機は、図書館という場所にも及んでいる。作家と図書館は著作権をめぐって、読者と図書館は検閲をめぐって、行政と図書館は記憶の管理と公開をめぐってしばしば抗争関係を形作ってしまう。こうした事態を照射しつつ、図書館と文学をめぐる新たな提起を行う論考を期待している。
            

     記

 一、締切 2016年8月20日
 一、枚数 35枚(400字詰)程度

『日本文学』編集委員会


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