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10月号特集 近世文学における〈続編〉

  
 古今東西、人気のある作品の続編が製作されるのは自然の流れである。とりわけ商業的な出版が行われるようになった近世文学において、その現象は顕著に表れてくる。例えば、天保三年に初編・二編が刊行された為永春水作の『春色梅児誉美』は、翌四年の三編・四編の出版と同じタイミングで、続編の『春色辰巳園』の刊行が開始される。その後、同シリーズは『春色恵の花』、『春色英対暖語』、『春色梅美婦禰』と五作まで続き、いわゆる「梅暦物」を形成した。
 続編は一体どのような方法論で作られたのか。「梅暦物」で言えば、仇吉といった脇の人物の挿話を膨らませたり、時系列を遡って発端編を作ったり、ということになろう。後者の方法では、東海道に始まり、金毘羅、宮島、木曽まで旅が続いていた『道中膝栗毛』が、文化十一年、弥次・喜多の出立の経緯を描いた「発端」を上梓したことなども連想される。明治に至り、この二人の旅が一九の手を離れ、魯文によって西洋まで到達した(『西洋道中膝栗毛』)ように、続編製作は何もオリジナルの作者だけが行うとは限らない。『朝夷巡島記』など、馬琴の未完の読本の結末を別の人物が書くこともある。
 あるいは、続編の概念をもっと広く取ることも可能かもしれない。例えば西鶴は好色物の第二作『諸艶大鑑』の主人公世伝を『好色一代男』の世之介の子とした。京伝は洒落本『通言総籬』に黄表紙『江戸生艶気蒲焼』のキャラクター(艶二郎、北里喜之介、悪井志庵)を登場させ、南北は『盟三五大切』の舞台のひとつを『東海道四谷怪談』でお岩が死んだ長屋と設定した。こうした例などは、両作の話の展開に密接なつながりがある訳ではなく、自身の評判作への便乗と見るべきであろう。また、俳諧に目を配ると、蕉門における『猿蓑』と『続猿蓑』との関係、あるいは其角の『花摘』に対する蕪村の『新花摘』の意識なども、ある種の続編と言い得るのかもしれない。
 本特集では、〈続編〉の定義をあえて緩やかなものにし、散文・韻文・戯曲を問わず、広く近世文学のなかに垣間見える、連作意識とでも呼ぶべきものの実態とその背景に迫ってみたい。
 

          記

 一、締切 2016年7月20日
 一、枚数 35枚(400字詰)程度

『日本文学』編集委員会


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