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10月号特集 〈世話〉的なるもの

  
本特集では〈世話〉的なるものを考えたい。
 〈世話〉という語は、周知のごとく、本来「当世の言葉」という意であったが、近世演劇において術語化し、明治になるとジャンルを表す文芸用語として演劇以外にも転用されるようになった。今日では「世話物」という形で、主に町人社会を舞台にする作品を指し示す言葉として使われがちな〈世話〉だが、近世演劇での使用実態に即すのであれば、「世話事」「世話場」という語があるように、演技・演出の様式や特定の場面・局面のみを指すのが、そもそもの用法である。俗に「時代の中に世話あり」と言うが、「世話物」に対置される「時代物」であっても「世話場」を描く作品は多いのである。
 転じて散文ではどうか。まずは人情本・滑稽本が一つのポイントとなろう。現在の近世後期小説の研究動向としては、おおよそ同じ時期に行われた読本が盛んなようである。筋立てがしっかりしていること、あるいは武張っていることも好まれる理由かもしれない。一方、〈世話〉なる世界を描く人情本・滑稽本は、日常を描くことを中心にするゆえかストーリー性が読本にくらべ希薄である。そのようなこともあってか論文も少ない。しかし、論文の多寡は作品の魅力や評価の指標には必ずしもならない。潜在的研究者は多いのではないか。
 本特集では、これら〈世話〉なる世界を扱った論考を期待する。演劇分野において「世話物」を扱った論文はすでに多くあるが、〈世話〉の原義にいま一度立ち戻り、演劇が何を見つめ、表現したのか、その意味を改めて考える必要があろう。また、散文にあっては人情本・滑稽本の論考を大いに期待する。同時に、読本の世界でも〈世話〉を主題にする作品があり、演劇同様、主題がいくさ敵討ちであっても「世話場」を描くものも多い。よって、読本からの執筆ももちろん歓迎する。ほか、写本小説や絵双紙も対象とすべきだろうし、それより前の時期にさかのぼる浮世草子に〈世話〉なるものの原型を探ることも可能であろう。あるいは、韻文の世界にも〈世話〉なる表現や感覚は求められないだろうか。
 江戸時代の人々は、江戸時代当代をどう捉え、どう描いたのか。近世文学における〈世話〉なるものを改めて見つめ直し、以って、〈世話〉を題材にしようとする近世文学の特性を考えてみたい。


          記

 一、締切 2015年7月20日
 一、枚数 35枚(400字詰)程度

『日本文学』編集委員会


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