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7月号特集 中世の表記と文体

   
 どのような文字を、どのように使用するか。書物作成に当たっては、表記法を決定しなければならない。慈円は『愚管抄』巻七で、「愚痴無智ノ人ニモ物ノ道理ヲ心ノソコニシラセン」ために「仮名」で書き付けることにしたという。「真名」と「和語」、それぞれの特質を洞察した上で、「仮名」表記が採用された。表記法が定められた時、それに伴って文体が制約されるであろう。平仮名、片仮名、漢字はそれぞれの表記に相応しい語彙を持つ。漢字の場合、それをどう用いるかによっても文体は変化する。
 書物を書写する場合にも、多様な表記法からの選択が可能である。『平家物語』や『曾我物語』に「真名」本があるように、諸本によって表記法が異なる場合は多々ある。和歌の写本では見た目を美しくするために、漢字と平仮名を交互に用いる場合がある。仏典、私家集あるいは絵巻、連歌懐紙などさまざまなジャンルにおいて、その内容ではなく、美的効果を重視して制作された書物が存在する。原本と異なる表記法が採られた場合、それに伴って内容はいかなる変質を蒙るのか。あるいは蒙らないのか。
 昨今の中世文学研究は多様な作品・資料を研究対象にしているが、書物というモノ自体を扱う場合も多い。中世の表記法に着目した場合、どれほどの多様性を見出すことができるのか。それらの表記法はいかなる文体を創出しているのか。複数領域が融合・分離しつつ、多彩な作品・資料群が生まれている様相を、表記面からあぶり出したい。
 たとえば個々の書物が一つの表記を採用する場面に着目する。それが意識的である場合、そこに働いた意図は何か。表記が意識されない場合には、その文化圏におけるリテラシーの形成・維持の問題が浮かび上がる。一個人が複数の表記をいかに使い分けているのかも興味深い。表記と文体に着目した時に、中世文学についてどのような特質を見出すことができるのか、さまざまな視角からの意欲的な投稿を期待したい。
     


   
              記


  一、締切 2014年4月20日
  一、枚数 35枚(400字詰)程度

『日本文学』編集委員会


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