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5月号特集 ひらく 古代文学研究

   文学研究をとりまく社会的な環境が厳しさを増すなか、目に見える形で成果を出そうとする焦燥からか、 ともすると瑣末な「事実」の掘り起こしに終始し、それで「学」とする傾向がありはしないか。「事実」をどのように体系化するか、あるいは自分の依っている体系に潜む磁力に自覚的であるか、「事実」と「事実」の関係性の記述にどのようにアプローチするか――その問題意識が今、日本文学研究にとりわけ重要になっている。
 古代文学研究には現存している資料が少ない。しかし、であればこそ、古代文学研究にはもっとも厳しく、研究方法に自覚的であることが求められてきたはずだ。今、その積み上げられてきた方法を内部から見直し、現代に位置づけ直したい。その成果は今後の古代文学研究のみならず、別の時代の文学研究、さらには歴史学・社会学・言語学など隣接諸分野へと議論の射程を広げていく力を持っていると思われる。
 「ひらく」という語には、「開く」「拓く」「展く」「啓く」といった複数の(漢字の)意味合いが重ねられる。隣接領域に向けて、あるいは別の時代の文学研究に向けて、古代文学研究からの提起。つまり閉じふさがっていたものを外へと「開く」。古代文学研究の未知の領野を「拓く」、など。
 例えば、不特定多数の作者がネット上で共作したコンテンツがいかに生成したかについて、若手の批評家でさえ、作者一人一人の来歴や属性と結びつけて語ってしまうことが多い。テクスト論や文化研究の時代を過ぎてもなお執拗にまといつく、「作者」という亡霊から解放される方法は、匿名の書き手が何人も創造にかかわることの多い古代の物語を研究する学説から導き出されるかもしれない。同じく古代の物語の語りの仕組みには、これまでのジェンダー理論・クイア理論を更新する視座があるのではないか。あるいは、古代の人称のありようは、現在の認知科学に寄与する可能性があるのではないか。
 創造と研究の「現在」と切り結ぶ、意欲的な論文の投稿を募りたい。


   
              記


  一、締切 2014年2月20日
  一、枚数 35枚(400字詰)程度

『日本文学』編集委員会


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