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8月号特集「〈文脈〉を掘り起こす―文学教育と〈語り〉」U

小学校では二○一一年度から、中学校では二○一二年度から新学習指導要領が全面実施となる。全教科で「思考力・判断力・表現力」をはぐくむことや、「言語に関する能力」を育成することが重視されている。国語科では、「言語活動例」が示され、「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」も新設された。だが、「指導事項」の習得と活用が自己目的化され、「言語文化」の実体化がさらに強固なものにされてしまうのならば、「読むこと」を創造的な営みとして位置づけることは、困難になるばかりだ。教室において、「読むこと」の混迷がより深刻なものになってしまうことが危惧されるのである。
優れた文学作品を読むことは、〈他者〉に撃たれ、新たな〈自己〉を発見する感動をもたらす。それはなぜなのか。児童・生徒にとって、これは切実な問題であるはずだ。しかし、中途半端な「ポストモダン」的言説や「正解」が温存される状況のなかで、「読むこと」の原理の追究は、十分になされているとは言えない。それゆえ、文学教育の現状は、「言語技術教育」や「活動主義」にとどまり、作品を消費の対象にしてしまっているのである。この流れに抗して、「読むこと」に愚直に向き合うことは喫緊の課題である。
昨年に引き続き、「〈文脈〉を掘り起こす―文学教育と〈語り〉」をテーマに掲げる。文脈問題が、教室における「読むこと」の生命線と考えるからである。「言語論的転回」を徹底的にくぐり抜けたうえで、〈文脈〉を掘り起こすとはどういうことなのか。〈本文〉とはどのようにして読み手に現象し、働きかけてくるのか。「記号」への解体という事態と対峙するなかで、このことが改めて議論される必要がある。〈語り〉のあり方に着目し、具体的な〈読み〉を問うていくことこそ、その基点となるだろう。〈語り〉という言葉そのものは、ようやく国語教育の実践と研究において注目されてきてはいる。だが、〈語り〉を読むとはいかなることなのか、その内実はさらに検討されなければならない。その際、「物語の語り」と「小説の語り」の違いを問うことも、教材論や実践論を探究する指標として重要だと考える。
意欲的な論文の投稿を期待する。

      記

一、締切   2011年5月20日
一、枚数   35枚(400字詰)程度


『日本文学』編集委員会


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