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7月号特集 インターテクスチュアリティの中世

 今回の特集では、複数のテクストの相互関連性のなかでの、テクストの意味生成を考えてみたい。「引用」というと、時間軸の前後を前提としてプレテクストとテクストの関係を考えることが多い。しかしここでは、あるテクストともうひとつのテクストの関係を、一方からもう一方への影響と考えるのではなく、両者が相互に作用する運動と考え、それが双方に意味を生み出す瞬間を捉えてみたい。例えば能における、本説となった説話と謡曲詞章の関係で言えば、本説の享受という観点から謡曲の意味生成を考えるだけではなく、謡曲詞章を分析する観点から、本説の説話の側に新たな意味を見出すこともできるはずだ。それは、平安物語と鎌倉・室町物語の関係、和歌と歌学、記紀と中世神話、寺社縁起と芸能・唱導、唱導などの挿入説話と中世テクストの関係でも言えるだろう。また、軍記物語のような諸本群をもインターテクスチュアリティ的に捉えることもできよう。類似性、同一性からだけではなく、差異と反復のなかでの意味生成を分析したい。
 さらに思いいたるのは、テクストを分析する主体自身も、実は、テクストとの相互関係において生成・変容している可能性だ。〈われわれ〉の中世文学の読み方には、近代的あるいは近世的思考のバイアスがかかっているかもしれない。逆に、今の『源氏物語』の読みが、古注に代表される中世的な知のバイアス抜きには成り立たないことは周知の通りだろう。このように、今日常識とされている読みの作法も、諸テクスト間の関係によって「創られた」伝統なのではないか。それを発見するのも、テクストの相互関連性のなかでの意味生成を探る思考の展開と言える。
 すなわち本特集は、インターテクスチュアリティという概念を導入することによって、中世のテクスト全般を多角的な視座から捉え返すのみならず、既存の中世文学研究の枠組みのあり方を現代において再び問い直そうとするものである。多くの刺激的で、新しい思考の論考を、時代相互乗り入れ的に、お寄せいただきたい。
  


      記

  一、締切 2011年4月20日
  一、枚数 35枚(400字詰)程度

『日本文学』編集委員会


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