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○五月号特集 古代文学における異言語○

  古代文学の特集として「異言語」を取り上げる。
 平安朝初期に成った東大寺諷誦文稿には、「大唐」「新羅」などの地域における「風俗」の「方言」があること、列島内においてもまた「当国(大和)」「毛人」「飛騨」「東国」といった地域の言語が「方言」として存在することが記されているほか、「草木」が話す言語にまでも言及がなされている。このように古代には列島内外において様々な言語が存在し、交錯しているという認識があった。ただし、この多言語性の認識は、多民族地域における多言語状況といったものとは性質を異にしている。古代には草木や鳥獣のざわめきさえも言語として捉えようとする認識の在り方がある。そのような非言語を含む多言語状況とは、多民族地域のコミュニケーション言語としての在り方とは違って、多言語状況の「多」を構成する「他」に、他民族、日本の中の異文化、自然、神の領域までの広がりを含んでいた。従ってそれは異言語とでも言うべき認識の在り方とも言えよう。
 古代文学における言語表現は、以上のような、一種の多言語状況下にあって、異言語を自らの文化・風俗と対置されるべきものとして特殊化しつつ、それを意識するという状況に置かれていたとみることができる。その意味では、地域や草木言語だけに限らず、階級間や男女の言語の質の相違、聞き做しなどといったことまでもが異言語として見えてくるであろう。そうした状況が古代の言語表現にとってどのような意味を持ったのかを考えてみようというのが今回の特集テーマの意図である。
 古代日本の言語状況に関しては、漢語と和語、あるいは、中国と日本、律令国家成立における中央と地方、といったスタティックな二項対立的な枠組みの中で論じられてきたが、異言語状況という把握の仕方をするとき、古代の言語表現は新たな様相を見せるはずである。会員諸氏からの意欲的な論考を期待したい。


      記

 一、締切 2011年2月20日
 一、枚数 35枚(400字詰)程度 

『日本文学』編集委員会


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