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10月号特集 近世文学にとっての〈歴史〉

 文学と歴史という古典的なテーマを、今あらためて問いかけることの意義。
 たとえば、近年の軍記・軍書、実録、講釈を含めた舌耕文芸に関する新たな研究の進展を考えた時、近世の人々─制作者、享受者ともに─にとっての〈歴史〉とは何か、あるいは歴史意識とは何か、という問題を問い直すことの必要性を強く感じるのである。正史という概念と微妙なズレをもちつつ存在する〈歴史〉、何らかの目的・意図をもって作り変えられ主張される〈歴史〉、あるいは説話と混然とした状態でありながら何の疑いも無く〈歴史〉として認識されている事柄の数々、そうした多様な〈歴史〉が、近世文学にとってどのような意味をもつのかを、研究の進捗をふまえつつ、新たな方向性として定位しようというのが本特集の狙いである。
 勿論、これまで研究の中心であり続けた諸ジャンルにおいても、本特集の視点から作品を捉え直すことの意味は多大であろう。たとえば、小説、演劇、俳諧・狂歌等の俗文芸において、〈歴史〉や歴史意識がどのように作品の中に潜んでいるか、素材として扱われているか、という問題や、国学のように文学的営為と歴史的営為が分かちがたく結びついている分野における歴史意識のあり様、あるいは漢詩文や儒学研究において相対化される日本の〈歴史〉や歴史意識など、古典的でありながら根本的な問題点を再考する契機としたいのである。
 そして、こうした視点から考究することが、おのずと文学とは何か、近世文学とは何かという研究の基底を再考することと重なり合い、あらたな議論・認識の創出に繋がることを望むものである。

     記
 一、締切 2010年7月20日
 一、枚数 35枚(400字詰)程度
                                              『日本文学』編集委員会