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5月号特集  古代文学研究の〈方法〉

 日本文学研究の危機が叫ばれて久しい。
 われわれ研究者はその「危機」を、外からもたらされたものと考えている。少子化をはじめとする社会構造の変化、それにともなう大学の改組・統廃合――たしかに今、日本文学研究が置かれた環境は厳しい。しかし、環境の厳しさにたじろいで、われわれ自身が「日本文学研究の意義と価値」を見失ってはいないだろうか。そして、研究者たちのそうした態度が、日本文学研究の「危機」を「久しいもの」にしているのではないか。
 古代文学研究においては、未発見資料の出現に期待をかけることは難しい。ほとんどの場合、新しい意見を述べるに際し、「新出資料」にではなく「より適切な分析方法」に根拠を求めざるを得ない。こうした条件を強いられて、古代文学研究の先人たちは、それぞれの〈方法〉を鍛えあげてきた。社会全体を骨太な枠組でとらえつつ、先鋭なジャンル論を展開した文学史、古注釈を再生し、西洋文学理論と融合させた言説分析――苦闘の中から、様々な〈方法〉が生み出された。それらの中には、古代文学研究の枠を越えて参照されたものも少なくない。
 現在、古代文学研究者の間にも、「危機」に由来する自信喪失が蔓延している。その結果、新しい〈方法〉を開拓しようとする気運は、かつてないほど減衰している。だが、古代文学研究の歴史が、〈方法〉との格闘の歴史であった以上、〈方法〉との徹底した対話の中に、「古代文学研究だから成し得ること」を見つける鍵があるはずだ。具体的には、これまでの古代文学研究において用いられた〈方法〉を、改めて問い直すことが必要だろう。宗教学、文化人類学、歴史学、精神分析など、隣接諸学をどこまで援用できるのかについて、具体的なテクスト分析と関わらせつつ吟味する作業も欠かせない。
 〈方法〉が「借りものの道具」ではなく、自覚をもって研究を行なうために欠かせない基盤であること――そのことを改めて認識させ、日本文学研究すべての領域に向けて、「自分たちにだからできること」の再考をうながす。そんな起爆力をもった、意欲的な投稿を期待したい。
                   記
    一、締切 2010年2月20日
    一、枚数 35枚(400字詰)程度
                                              『日本文学』編集委員会