ロゴ
Home | About Us | Contact Us | Site Policy | Access Map

投稿のご案内

5月号特集 〈非源氏的なもの〉の系譜

   

  『紫式部日記』によれば、『源氏物語』は一〇〇八(寛弘五)年の時点において宮廷貴族たちの間で評判になっており、同年には中宮彰子の意向で大がかりな清書本作製も行われたと見られる。その千年後にあたる二〇〇八年を『源氏物語』千年紀として記念する気運が高まっている。こうした時期だからこそ、『源氏物語』を相対的に捉え直し、古代文学史を再考する意義があろう。機会を捉えつつも、溺れず、振りまわされずにである。
 『源氏物語』を古代における達成と位置づける文学史観は、表現史的な連続と切断を『源氏物語』を基軸に構想してきた。そうした『源氏物語』への特別視をいったん保留しよう。
 たとえば、『夜の寝覚』や『狭衣物語』が描く天人降下と音楽の組み合わせは、『竹取物語』や『うつほ物語』の系譜を引き継ぐ、異界との交流をめぐる神話的想像力の産物であるが、『源氏物語』はこうした音楽の奇瑞に類する超自然的要素を抑制する。また、『源氏物語』は多量の和歌を含み、催馬楽などの歌謡にも言及するが、ウタの〈音〉の力に対してどれだけ意識的であったか。あるいは、漢籍の思想から『源氏物語』が取捨したものは何か。『古事記』『日本書紀』が描く戦闘や暴力が、貴族文学としての『源氏物語』から排除されていることは自明なことであるのか。『竹取物語』には皇子の暴力が描かれ、天皇の兵が要所に登場し武力を誇示しているからである。身体の描き方は、性は、感情は、笑いは、生活様式や空間、社会的階層と差別、宗教の多様性についてはどうか。
 『源氏物語』が切り捨て、隠蔽し、あるいは朧化したものから照射するとき、『源氏物語』はいかなる相貌をあらわすのか。『源氏物語』が排除したものが紡ぐ文学史的系譜とは何か。〈源氏的なもの〉を相対化し、〈非源氏的なもの〉の地点から、古代文学の多様性を位置づけ直したい。多彩なアプローチの投稿を期待する。
     記
 一、締切 2008年2月20日
 一、枚数 30枚(400字詰)程度
                                                『日本文学』編集委員会
         
 


ページトップへのボタン このページのトップへ

Copyright (C)2006 日本文学協会, All Rights Reserved.