■但馬みほ著『アメリカをまなざす娘たち　水村美苗、石内都、山田詠美における越境と言葉の獲得』■

序章　越境に関する国際状況／研究対象選出の理由

第一章　視覚からの逃避と視覚への逃避――水村美苗『私小説from left to right』における美苗の主体性構築
　◉はじめに　『私小説』への批判と分析／『私小説』のあらすじ
　◉第一節『私小説from left to right』における視覚の問題　写真が語ること／言語と主体性／聴覚の作用／日本語による主体性の構築
　◉第二節　『私小説』の言語表記　日本文学の単一言語主義／多言語混交文体の意味するところ／文体の効果
　◉第三節　アメリカを触媒とした母娘関係の変容　娘の過剰な女性化／女性に求める価値観の日米における相違／日本社会に対する不信感／アメリカにおける母娘関係／イエから個人へ／過剰な女性化と人種の関係／母と娘の断絶
　◉第四節　〈白人文化〉の内面化　敗戦国出身の東洋人／女ことばと白人性

第二章　日本のなかのアメリカ――「石内都」を生んだ基地の街、横須賀「横須賀ストーリー」
　◉第一節　傷だらけの横須賀　写真家・石内都／石内の「個的」な存在感と普遍性／横須賀の特殊性／男性写真家による横須賀の姿
　◉第二節　石内都の「横須賀ストーリー」　絶唱する写真／ドブ板からの解放
　◉第三節　二人の石内都　『豚と軍艦』に描かれた横須賀／『蒼い時』に描かれた横須賀／傷から傷跡へ／つながり――横須賀から「ひろしま」へ／ヨコスカＢＡＢＹ

第三章　母親探しと言葉の獲得――山田詠美『ベッドタイムアイズ』
　◉はじめに　『ベッドタイムアイズ』の評価／『ベッドタイムアイズ』の主題
　◉第一節　〈原初の母〉としてのスプーン　赤ん坊としてのキム／発話からみるキムの幼児性／キムと二人の母／キムとマリアの関係／スプーンとマリアの共通項／「愛」という言葉／母と子の密着／書記言語の介入／言語の獲得／法の介入と他者の発見／異性愛マトリクスの脱構築
　◉第二節　恋愛表現から見る対米関係　『ベッドタイムアイズ』の政治性／恐怖する男たち／アメリカという夢／少女漫画と『ベッドタイムアイズ』／少女漫画の影響力／『ベッドタイムアイズ』の人種観／「みっともなし」の日本人／英語話者に対する劣等感

終章　娘たちのまなざしの先へ　なぜ白人になりたいのか／展望

あとがき――今浦島のまなざし　社会を映すおかしな日本語／言語の自発的隷従／アメリカの大学教育