■真銅正宏著『匂いと香りの文学誌』■
2019年10月10日 春陽堂書店刊 331頁 2400円+税
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第1章 人の身体の匂い
人の匂いを書くこと
古井由吉「杳子」――病の匂い
田山花袋「蒲団」――匂いと性欲と文学
匂いの譬喩性
大岡昇平「武蔵野夫人」
田村俊子「憂鬱な匂ひ」
村上春樹「羊をめぐる冒険」
column 1 汗の匂い
第2章 香水と花の文化
夏目漱石「それから」――香りを意識する男
三島由紀夫「沈める滝」――手紙に封じ込められた香り
赤江瀑「オイディプスの刃」――花の匂いと香水の競演
column 2 香水と名前
第3章 異国の匂い――巴里
永井荷風『ふらんす物語』――パリ風景との逆説的出会い
薩摩治郎八『ぶどう酒物語』――バロン・サツマの嗅いだ香水と酒
柳沢健『三鞭酒の泡』――ワインの哲学
日本におけるフランスの香り
column 3 予兆としての匂い
第4章 異国の臭い――上海
横光利一「上海」――近くて遠い場所
金子光晴『どくろ杯』――街の体臭と人間臭
堀田善衞『上海にて』/武田泰淳「上海の螢」――終戦時の反転と混乱
若江得行『上海生活』――鼻で嗅ぐ上海
林京子『上海』――三六年の時を隔てて
column 4 大阪の匂い
第5章 匂いと嫉妬
薄田泣菫「女房を嗅ぐ男」――嫉妬の矛盾
織田作之助「夜の構図」――腋臭と嫉妬
川端康成「眠れる美女」――無反応なるものと記憶の対比
嘉村礒多「業苦」――あまり匂わないものを嗅ぎ出すこと
column 5 闇市の臭いと少年
第6章 湯と厠とこやしの臭い
尾崎紅葉「金色夜叉」――湯の臭さ
谷崎潤一郎「厠のいろ〳〵」「少将滋幹の母」――厠の臭い
尾崎翠「第七官界彷徨」――こやしを煮る
小泉武夫『くさいはうまい』――悪臭の魅惑
column 6 尿の臭い
第7章 発酵と美味しい匂い
宮本輝「にぎやかな天地」――発酵食品の匂い
小泉武夫「くさいはうまい」――においを言語化すること
開高健『小説家のメニュー』――美味しい匂い
column 7 香魚
第8章 記憶と幻臭
村上春樹「土の中の彼女の小さな犬」――幻臭としての死臭
堀辰雄「麦藁帽子」――麦藁の匂い
加能作次郎「乳の匂ひ」――記憶を喚起する匂い
三好十郎「肌の匂い」――匂いによる人物捜索
小川未明「感覚の回生」――匂いの再現による時空の同一化
column 8 匂いによる推理
第9章 木と雨と空気の匂い
村上春樹「午後の最後の芝生」――木の香り
村上春樹「土の中の彼女の小さな犬」――雨と土と空気の匂い
村上春樹「中国行きのスロウ・ボート」――香の匂い
無と有の間で
北原白秋「新橋」――都会の入り口の香り
column 9 花と香炉
第10章 言葉と香り
森茉莉「甘い蜜の部屋」――修辞学上の香り
永井荷風「濹東綺譚」――煙草の薫りと譬喩
幸田露伴「香談」――香りを指す言葉の貧困
column 10 匂いのアフォリズム
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