■久保朝孝著『紫式部日記論』■
2020年6月27日 武蔵野書院刊 318頁 7000円+税
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〈本編〉
第一部 『紫式部日記』の成立
第一章 『紫式部日記』の成立――読み手の想定を手がかりに――
一 研究史の整理
二 池田節子説に即して
三 「別記」としての『紫式部日記』
四 女子による「家の記」
五 藤原為時家における親子の紐帯
六 『紫式部日記』の成立過程
七 「家の記」としての意義
第二章 『紫式部日記』所謂消息文とそれに続く記事との執筆先後の問題
――所収和歌を起点として――
一 所謂消息文の後に位置する和歌の異質性
二 寛弘七年記事の検討
三 寛弘七年記事変貌の因
四 「十一日の暁……」段とそれに続く贈答歌所収二段の位置
五 結び
第三章 古本系『紫式部集』巻末付載「日記歌」考
一 「日記歌」は首欠説の根拠となり得るか
二 南波浩説存疑
三 家集歌と「日記歌」、それぞれの詞書独自本文の比較
四 「日記歌」冒頭三首の検討
五 「日記歌」冒頭三首と同一家集歌の検討
六 複数の「日記的小家集」の想定
七 「日記歌」の名称
第四章 『紫式部日記』所謂消息文試考――その主題と執筆意図――
一 所謂消息文再検討の意義
二 同僚女房批判の実相――小少将の君の焦点化――
三 同僚女房批判の展開――未熟な上﨟への憤り――
四 同僚女房批判の意味
五 宮廷社会における自己の定位
六 消息文の主題と執筆意図
第五章 『紫式部日記』の日記的部分における「侍り」の機能
一 「侍り」の機能再検討の意義
二 先行研究の到達と問題点
三 「侍り」使用の種々相とその機能①
四 「侍り」使用の種々相とその機能②
五 私的感懐の抑制
第六章 『紫式部日記』首欠説批判
一 首部欠落に関する対立
二 首欠説論拠〈一〉批判
三 首欠説論拠〈二〉批判
四 首欠説論拠〈三〉批判
五 首欠説論拠〈四〉批判
六 「日記的小家集」想定の限界
七 首欠説の否定
第七章 『紫式部日記』敦成・敦良両親王御五十日祝宴記事の比較
序
一 観察姿勢の相違
二 宮廷女房としての行動者
三 両親王御五十日祝宴記事起筆態度の相違
四 両親王御五十日祝宴記事展開の相違
五 敦良親王御五十日祝宴記事執筆の意義
第二部 『紫式部日記』の諸相
第八章 『紫式部日記』の和歌――敦成親王誕生前後の十首――
一 敦成親王誕生前の四首
二 敦成親王誕生後の六首
第九章 『紫式部日記』の風景――庭園の遠近法――
一 冒頭の風景――庭園の遠近法――
二 女郎花の贈答――逆転する視線――
三 五日の御産養――反転する視線――
四 月夜の舟遊び――ウチとソトとの融合――
五 水鳥の憂愁――視線から思念への転移――
六 一条天皇行幸――聴覚から視覚への転換――
七 里居の追懐――回想を誘う庭――
第十章 『紫式部日記』の土御門殿――邸宅のパトス――
一 藤原道長と土御門殿と『紫式部日記』
二 土御門殿の概要
三 『紫式部日記』にみる土御門殿の行事
四 呼び寄せる土御門殿
五 出産する土御門殿
六 上昇する土御門殿
七 付けたり
第十一章 『紫式部日記』断片記事三編の行方――白詩「海漫漫」享受を起点として――
一 「十一日の暁」記事の始まり
二 漢才は発露されたのか
三 「海漫漫」の諷刺性
四 「十一日の暁」記事の不調和
五 続く二編の断片記事
第三部 紫式部の影像
第十二章 紫式部の虚構の方法――『源氏物語』と『紫式部日記』に見る〈読み手〉の導入――
一 静かな《読者》
二 発言する〈読み手〉――仮構される《読者》Ⅰ――
三 晦ます〈読み手〉――仮構される《読者》Ⅱ――
第十三章 日記文芸史の内なる〈紫式部〉――『紫式部日記』以前――
一 前提
二 『土佐日記』と〈紫式部〉
三 『蜻蛉日記』上巻と〈紫式部〉
四 『蜻蛉日記』中巻と〈紫式部〉
五 『蜻蛉日記』下巻と〈紫式部〉
六 『和泉式部日記』と〈紫式部〉
〈付編〉
第一章 『伊勢物語』初段に関する三つの問題
一 古典本文の問題
二 段落分けあるいは物語構造の把握
三 引歌の分かりにくさの意味
第二章 『古今和歌集』六一六番歌と『伊勢物語』第二段歌の再検討
――同一異相の和歌をめぐって――
一 『古今和歌集』六一六番歌の位相
二 『古今和歌集』六一六番歌の構造――新解釈
三 『伊勢物語』第二段歌の再検討――新解釈
四 『古今和歌集』六一六番歌と『伊勢物語』第二段歌の関係
――片桐洋一修正説の批判的検討――
五 同一異相歌を視野に入れた文学史の構想
第三章 父に早逝されて零落した姫君たち――空蝉・夕顔・末摘花――
一 空蝉の思惟――身の程意識の内実と源氏拒否――
二 夕顔の不安――もの怖じと隠された誇り――
三 末摘花の意志――〈静止する行動〉を支えるもの――
原題・初出一覧
あとがき
索引
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